あの物語は今も尚

最近(といっても1か月前だが)和歌山へ小旅行に出かけた。Gotoで安くなるのと、和歌山市など行ったことがないという興味から出かけたのだ。

 

観光を終え、夕飯を食べ、我々は和歌山行脚に出かけた。あまりに旅行が楽しみすぎて私の頭からは消えていたが、当日だったか前日だったか連れに「行脚したい」と言われたのだ。自分も賛成し、ホテルから最も近いゲーセン「プレイランドサーカス太田店」へ向かった。

そこは良くも悪くも歴史のあるゲーセンだった。最新機種はしっかり置いているがどことなくノスタルジーで、メンテナンスは良くそれでいていい意味で小汚く素晴らしいゲーセンだった。いいゲーセンだなと思いにふけった。いや、今ふけっている。その時は酔っていたから少し気分は上がっていた。

 

 

そしてそんな雰囲気を見る度、私はあの場所を思い出すのだ。

 

星狩物語 中百舌鳥店

 

それは大学から最も近いゲーセンだった。

11:00~翌5:00という謎の営業時間、ノスタルジーを通り越してもはやボロい、メンテナンスもお世辞にも良いとは言えない(壊れたまま放置していた時もあった)。タバコ臭く、台パンや奇声など普通にあった。しかし、それでもこのゲーセンは我々ゲーマーをひきつけ、閉店して4年もたった今も尚昔話で盛り上がる時がある。

私はこのゲーセンに1年しか通っていない。しかしそれでも、今まで通った中では衝撃だったのかもしれない。

 

正直汚いゲーセンはもう都市伝説だと思っていた。高校で音ゲーを始め様々なゲーセンに通ったのだが、大体綺麗だった。大手ゲームセンター、商業施設内の子供向けのゲームセンター、もしくはラウンドワンのゲームコーナーが主流となっている今、もう私の中ではそれが普通だと思っていた。漫画に出てくるような薄暗く、そこまで賑やかでもないが常連で盛り上がるような、そんなゲーセンはないと思っていたのだ。

 

今でも覚えている。初めて訪れたのは大学前期入試の日。入試を終えた私は帰り道に見つけてしまったのだ。早く帰らなければいけなかったが、好奇心に負けて入店してしまった私はその場でE-passを買って弐寺をプレーしたのは覚えている。なぜかその時やったspiral galaxyは今も覚えていて、今もこの曲をやるたび少し思い出す。(受験勉強の際に、それまで持っていたE-passをシュレッダーにかけた話はまたどこかで)

こうして入試に受かった私は星狩に足繁く通うことになった。あの時の邂逅は私の大学生活を決めてしまったのかもしれないと今なら思う。

 

こうして私の星狩物語が始まった。

星狩にはいろんな思い出が詰まっている。初めて大学で知り合いができたのはあのゲーセンだったし、学外の人とも初めて喋ったのもあの場だった(彼は覚えていないだろうが)。サークルの活動も主は星狩だった。活動がなかったとしても行けば誰かはいた、いなくても待っていれば誰かしら来る。そして共にゲームの結果に一喜一憂したり時に一緒に遊んだり煽りあったりした。

学内外問わず数多くの友人ができた。一緒にやってなぜか落ちたムンチャ灰だったり、ベンチから突然飛んできたYAKSHAだったり、初めて会った人間と一緒にプレーした曲は覚えている。今でも遊ぶ人もいれば、Twitterでいいねを投げるだけの関係になってしまった人もいる。しかしそれでもあの場で出会えた仲間という存在は、大学生なりたての当時の私からすれば大きかった。

 

我々の周りは学生生活も交友関係も、段々星狩を軸として回っていたような気もした。昼休みのわずかな時間で弐寺をしに行く同期もいた。同期を勧誘するために星狩へと呼んだこともあった。弐寺を観戦するために横の大きいごみ箱に座って見ている人もいた気がする。夜通し遊んで二次会は深夜の星狩、なんてことも一度あった。その時は眠さでまともにプレーできなかったが深夜テンションもありとても面白かった。年始の寺参り(ご想像にお任せする)もした。多分。もう記憶があいまいである。

何色なのかわからない大学生活は楽しいし、そんな異常な日常が続くと思っていた。

 

しかし、終わりは突然やってきた。

 

1月末を持って閉店してしまうと、1月12日突然告知されてしまったのだ。大学のどの施設よりも利用したんじゃないかというくらい訪れた星狩、ハイ閉店ですねお疲れ様でしたね、と軽く流せるものではなかった。閉業前、当然私も訪れた(様々な都合で最後に来店したのは30日だった)。最終日ではなかったものの賑やかだったのは覚えている。私も最後は「THANK YOU FOR PLAYING」をプレーした。

 

その一か月後私は皆伝を取った。心残りがあるとすれば、星狩で、皆に見守られながら受かりたかった。これは私だけかもしれないし、意外とみんなそう思っていたのかもしれない。

 

そして先日また一人、あの星狩で育ったプレイヤーが皆伝になった。それを受けたのもありこうして文章を書き連ねている。おめでとうございます。

 

閉店からもう4年半経った。あのゲーセンに通っていた人間はもうほとんどが社会人になってしまった。かくいう私も大学院を経て来年の春で就職する。それだけの日が経ったのだ。それでもどこかで古くからの付き合いで集まると今でも盛り上がる。不思議な場所である。

 

 

星狩「物語」は今も語り継がれる。